福岡家庭裁判所小倉支部 昭和49年(家イ)154号
本件は申立人から当裁判所宛に昭和四九年三月四日書面にて郵送され受付けられたものであるが、その申請書の請求の趣旨が精神衛生法第二〇条に基く保護義務者選任申立事件であるのか、民法第八七七条ないし第八七九条の扶養関係の調停、審判を求める申立であるか判然としなかつた。また後者であるならば法定の扶養義務者、扶養の程度、方法等の必要要件については全く触れていない。そこで当裁判所としては同月五日申請の趣旨の釈明(特に保護義務者の選任については当裁判所において昭和四八年八月七日受付、同年九月一七日すでに申立人の父藤田幹男を申立人の保護義務者に選任しているのでその取消を求めるか否か等)をしたがその回答がなかつたので、とりあえず扶養調停事件として立件するとともに家庭裁判所調査官に調査を命じた。しかして、その調査報告書、医療法人○○病院の医師からの電話聴取書、昭和四八年(家)第一二六五号保護義務者選任申立事件の記録によると、申立人はこれまでに精神病(精神分裂病)で同病院に入院したことがあつたが、昭和四九年四月九日精神分裂病で上記保護義務者藤田幹男の同意によつて再度同病院に入院した。しかして上記医師の診断では申立人はいまだに異状体験(主に幻聴)があり、回復退院の見込みはついておらず、調停に出頭することは無理であり、本件申立自体が異状体験に基くものと思われるというにあり、同病院の事務員からの電話聴取書によると、申立人の入院費は医療扶助でまかない、その他の日用品代、少遣い等は申立人の家族が出していて不自由なことはない旨回答している。以上を総合すると、本件は先ず保護義務者の選任又は取消に関する事件では問題はなく更に申立人に対する扶養の点についてみると、申立人に真に扶養の必要があつて本件申立がなされたとみることはできず、むしろ上記医師の回答の加く精神分裂病による異状体験に基く申立であると考えるのが相当と思われる。
よつて当裁判所は、本件が性質上調停をするのに適当でないと認め、家事審判規則第一三八条により事件を終結させることとする。
(家事審判官 伊藤敦夫)